服部大次郎の日々雑感2024⇦2006

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悪い男

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 漁港にはだれもいなかった。 そこへ、ワゴン車がやってきて、おやじが2匹の黒いどう猛な犬を放した。 糞、小便はするは、人でもいたらどうする。「おやじ、くさりつないどけよ」。  


「悪い男」監督:キム・ギドク 田舎から出てきて、日も経たないとおもわれる女が街の真ん中でチンピラに強引にキスをされる。 それを見ていた兵隊にチンピラはこてんぱにたたきのめされる。 その後、結局、その女は、だまされ、売春宿に放りこまれる。 後はよくある筋書きだけど、カメラは男と女をじっくりと見ていく。 「春夏秋冬そして春」とテーマは共通している。 ちょっとしたことで道を外れ思いも拠らぬ流れに身をおきはじめる。 多くの場合悪の道であるのだが、ここでは現実の世界でもあるのだ。 人間は何故に望みもしないことを歩きだすのであろう。 しかし、「と、思っているが、それは当人が望んだことだ・・」と 高橋和巳の「我が心は石にあらず」にはあったとおもう。 女は「エゴン・シーレ」が好きで画集を離さない。 エゴ・シーレがキーにもなっている。 結末は3つ用意されていたようだ。が、チンピラと女は街を離れトラックで売春をしながら旅にでる。 半島の俯瞰する半島の海岸を小さくなってトラックはいく、赤い幌が点となり暗転、そしてクレジット。 だが、その赤い点だけが最後まで画面に残される。 小さな現実。半島の業なのか、恨(はん)なのか。作者の見つめる眼差しを追ってみる。 どうしようもないものを背負い、それが解るほどに逃げることは必要でなくなる。 じっとり、どろどろと救われぬ世界なのだが、そこから生きようとする希望みたいなものが見えてくるから、上手い。 後味がイイのだ。