服部大次郎の日々雑感2024⇦2006

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AIS展

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美術館にて「AIS展」を見る。出品者・九人、大小の作品が広い4号展示室にゆったりと展示してある。太田朋江さんの(本人が漉いたとおもわれる)和紙を素材とする作品が目を惹く。黒っぽく着色された和紙を数枚づつ重ね、赤や白の筆触が着物の襟のように粋に覗く。その10点あまりの作品を大壁面に展示してあり、コンポジションのようでもある。紙を重ねることで厚みを持たせてあり、より素材的に紙である。黒い色から、のし昆布のようでもあり、鉄(くろがね)のようでもあり、軽さと重さが共存する。紙なのに強い。障子、ふすまと元々紙はさりげなく、生活に溶け込んで生活を支えていた。紙の家とも称された日本家屋。自然界の生き物が作り出すのもほとんどが紙の棲み家である。「3匹の子豚」でわらの家がなまけもので、煉瓦の家が強いとする教訓も(原本は知らないが)あやしい?ヨーロッパ的思考は判るが、物量、環境という肝心な部分が欠落、あるいは後ろに隠されている。と言わば、人間の営みの自然な感覚を紙に着色することで、紙本来の力を復帰さしているようにも見える。白くフラットであろうとする紙を黒くし、重ねることで捉え直そうとするアクションに現代を感じる。それは、森永昌樹さんの作品にも言える。過去の概念的であった表現からすれば、ベニヤ板を細く切り、組むというやり方は、ものが新しく生まれ変わるというストレートな創造である。中島節子さんの合板を胎児のように切り抜いた作品群も、愛嬌を見せながら(女性ならではの?)むごさ、まがまがしさが全面に出ていた。皆、それぞれにたのしい展開であった。