絵画の後、傘さして土砂降りの中を歩く。
水がはけきれず、足元の路上は洪水並。
わざわざ歩いていく人などだれもいない。
元々閑古な商店街である。
ビニール合羽の高校生が自転車で行く。
雨は嫌じゃない。特に土砂降りは。
傘さして歩く姿を多角的にキャンバスに置いて見る。
ナルシストである。
途中酒屋でビール買って、また、ひたひた、ジャブジャブ商店街を北へ歩く。
そう、先日も酒館から傘さして土砂降りの中を帰った。
途中コンビニでアイスクリームを買って、傘のことなど忘れて濡れ鼠状態で家へ帰った。
気持ちイイのだ。
何もかも全てを洗い流すような青春の日の昂揚がある。
出来るなら素っ裸になりたいくらいだ。
ビール下げて、傘さして商店街の2本裏通りを歩く。
通り沿いのドブ川の水位は低い。大きな鯉が川底を混ぜる。
不動のアオサギが小魚を狙う。
午後6時30分丁度にギャラリーIBAHに着いた。
時間に間に合った。
しかし、全員がそろうにはいつも1時間後だ。
MちゃんとKちゃんがいた。
雨だし集まりも悪かろうから、3人で呑みはじめた。
そのうちKさん、Mさん、Wさん、Cさんの順に顔がそろった。
欠席者3名。
来る人ごとにビールで乾杯。ビールを拒む者などだれもいない。
主のMさんが用意してくれた酒、肴もおいしい。
裸電球とクーラーの8畳一間は定めし江藤新平らの隠れ家・密談の図。
8月の「磁場展」へ向けての恒例のテーマ(副題、コピー)決めである。
どこからはじまるでもなくすでにはじまっている。
美術の現状、世間話の中にもっともリアルなアクチュアリティの言語を探っていく。
磁場においてはこの時間が最大の山場であり、言語を通し今を語ろうとする文明論、社会論でもあると言ってよかろう。
ふるいからどんどん言葉が落ちて行く、一度落ちて浮上してくるモノもある。全員に共通しもっとも今を代弁、象徴してくれる言葉でなくてはならない。
Cさんが火ぶたを切った「ネオ・パッション」が一時は優位であったが、二転三転四転五転と・・言葉は現れ、はがされ解体され、意味、概念がぐるぐるまわる。
ザザーっとまだ外は雨。
テーマ(副題)に合わせて全員が作品を制作するわけでもなく、言わばテーマは現状認識の確認でありチームワークというものであろう。
ここ30年、一度としてテーマ(コピー)が評価なり受けるたことはないものの、内輪的には重要かつたのしい時間なのであります。
「情念・きせき・情熱」に落ち着いたようだが、頭はもうろうとして定かでない。
気づくと深夜1時30分。思い出したように雨の中にでて同じ方向の三人はタクシーに飛び乗った。