服部大次郎の日々雑感2024⇦2006

tomatotiger8.sakura.ne.jp

憂鬱なる小説家・開高健

イメージ 1

美協の日直当番にいく。当番と言っても、特別やることはない。写真、ムービーを撮ったりしているうちに一日も終わった。今日を見る限りでは以前にまして、観覧者がぞろぞろと、うれしいことだ。


開高健オーパ!冒険旅」をNHK教育で見る。画塾教師とその教え子の母親との恋、その子供は「ふんどしに刀差した殿様がお城の前を歩いている絵」を描く芥川賞の「裸の王様」に始まり、ベトナム従軍記以後、開高さんは小説が書けなくなる。自殺にまで追い込まれる。そこで、例の映像が流される。井伏鱒二翁に「書けないんですよ、どうしたらいいんですかね」と居酒屋で一杯やりながら乞うシーンである。「何でもいいから書けばいいんだよ、いろはにほへとでもいいから・・」と井伏鱒二翁はとつとつと答えるだけ。また、書斎でのインタビューでは。書斎にバーバリーのシャツを着て、あぐらをかき、机にはワインのボトルと何故かレモン片の入ったウイスキーグラスがあり、タバコにジュッポで火を点け、もう一杯入ったような風呂上がりのような顔で煙を吐きだしながらしゃべり出す。「見えざる危機は自分の心ですね」「自分の心を異常に危機をはらむものはないですね」「外側からくる危機に対しては、人間は割合に抵抗のすべを死っているんですね」「自分の心に生じてくる危機に対しては手の付けようがない、なかなか」「これが最大の問題です」「私にとって最大の危機は私の心です。生きてる限り」(40代のころであろうか)やがて、開高さんは書くのを止めたかのように呑み喰い、世界の釣りに明け暮れる。文字のない中国やモンゴルの河にイトウを追った。現代社会で培ったものを捨て、生まれいでた時のように未踏の地平に立つ、それが最大のウツから解放であったのだろうか。