雷 暴れる
ゴゴッコー、遠雷。そして、にわかに下界が暗転したかとおもうと天地避けんばかりの雷鳴。蚊帳を張ろうかなとおもうのであった。スレートの屋根に矢のように雨が降る。南の戸口から勢いこんで入ってきた風はカーテンをなびかせ、北の窓の簾をゆさぶり抜けていく。正しくワイエスの「南からの風」のようだ。右から左へ受け流すも立場をかえれば、左から右へということになる。稲妻を見てやろうと二階にあがった。水槽に墨を落としたような見事な空でもなく、フラッシュの閃光は見えるのに、、稲妻は見えない。ただ、轟音だけは映画をはるかに越え戦場(を知らなくっても)戦場のようである。やがて雷も雨も弱まって空が明るくなる。ここでニイイニイゼミが鳴けば梅雨開けだけど、梅雨に入ったばかり、これくらいの雨では全然足りない。