服部大次郎の日々雑感2024⇦2006

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川副田園の郷

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梅雨の晴れ間、川副の田んぼにいく。
途中ひさしぶりに弁当屋でしゃけ弁(390円)とお茶(120円)を買う。
まだ、刈られていない大麦の田んぼも残っている。
田植えの水田もこれからというところのようだ。
漁港ではすっかり舟が姿を消し桟橋や支柱だけがカタカタカリゴリと風に揺れている。
田んぼにも漁港にも鳥の姿が不気味なくらいにない。
食糧生産の場でありながら不自然な景色である。
犬井道の川副支所3階の「かわそえ佐賀田園の郷ギャラリー」に寄る。
「金子剛作品展」が開催中。
「凧あげ」の大作を中心に植物画、風景画、版画など金子ワールドである。
常設では川副出身の画家・(故)田原輝さん、吉田進一さん、深川善次さん、大隈武夫さんの見ごたえある大作が飾ってある。
元々町役場の部屋を利用しているので、展示状態がいいとは言えないが、作品にはじっくり向き合える。
誰もいない。だれも来ない。時間もゆっくり流れるような。
田原輝さんの50号ぐらいの作品「海老網を繕う(1939年作)」は好きだ。
漁具が散乱する漁師小屋で窓明かりを逆光に男が網を繕っている。小屋の窓からは有明海が見える。止まったような場面であるが、海の揺らぎ、海からの風が今なを小屋に届いている。ゆっくりと時が流れるように・・。
戦前の有明海とその暮らしが垣間見える。
抗わず叫ばず、その日を暮らすつつましさか、そこに何らしかの”たくましさ”が品よく浮上する。
田原さんは終始、仏像を描き続けられているが、それ以外にも幅広くモデルと取り組んでおられ、現場で描くということも多かったようである。
昔浪人のころ、吉田進一先生に連れられて東京の田原輝さんのご自宅を尋ねたことがある。暗幕で窓を覆い電灯の下で仏像の大作を描かれていた。
東京教育大を退官された直後だったようで「吉田君、教員してるうちは絵は描けんな・・」とおおらかに言われたのが今も耳に新しい。
田原輝さんの画集を見ながら改めて川副の風土に思いをめぐらし、3階の窓から川副犬井道の町を眺めた。
品のよさというのは本人もわからないもので、もって生まれたものでもある。
誰も来ない。誰もいない。ギャラリーのソファーで時の過ぎ行くままに。