服部大次郎の日々雑感2024⇦2006

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場所の均衡

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「黄美展」(ギャラリー久光)を見に行く。正月早々、みなさんがんばっていらっしゃる。大作もたくさんあった。林田龍信さんの水彩画群に足が止まる。従来の観念的表現からがらりと変わって、身近な野山の風景画である。山や棚田を高所から俯瞰的にとらえ、棚田、山林、部落の細部まで血がかようよう丹念に描いてある。すがすがしくほほえましくおおらかな野山の詩。場所が本来持つ強さを作者は見付けている。見慣れた平凡な風景の中に。作品を見ると同時に、山腹に座り写生する作者にもなっていくみたい。鉛筆も筆もリズミカルな筆致に迷いはなく、従来の空間意識が逆ににじみ出、新たな表現を可能にしている。峡谷を抜け新たな地平が見えて来たというところ(位置)ではないのだろうか。技術を越えたアルチザン的なワイエスが、ミュシャが、モローが、ターナーがいる。


その足でボクは田んぼへと向かった。夕陽が雲をこの世の果てとばかりに照らし沈んでいく。場所は等価に均衡する。絵ハガキの見てくれではない位置に立つ。場所は地球上どこであろうと等価均衡の入口を持つ。それしかない。