服部大次郎の日々雑感2024⇦2006

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奈良美智展

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誘われて、みなとみらいの横浜美術館へ行く。
奈良美智展(2012.7.14~9.23)
少女の顔が万人に受けるのは当然だろうが、
絵画的には、饒舌にならず、”ズバリ一言”で現代を切り取っているかに見えるところが奈良 美智たらんとするところであろう。
少女の多様な表情のイラストに見えるところも子供、若い世代に共感を呼ぶのだろうが、しっかりと従来に絵画に裏打ちされている。それをわざわざ見えるようにしないだけで、またそこを作者が打ち砕こうとするところが新たな絵画の概念であろう。
美術や絵画を広く自由化、いや一人一人の身近に取り戻そうとするかのようである。
櫃田 伸也、村上隆、大竹伸郎、D・ホクニー、A・ウォーホル、ピカソ、J・ジョーンズが見え隠れしながらも表現は少女の一人にしぼられていく。ひたすら自由な自分の表現を探求した人であろう。
どこにでもいそうなちょっと喜怒哀楽の強い個性的な春少女。
遊び相手がいなくとも一人で何役もこなすエンジェルのようなピエロのような女の子である。
3か月の間、長蛇の時間差入場をするという盛況ぶり、子供大人が真剣にしかも顔をほころばしお喋りして鑑賞するというのもあまり見ない現象である。
第一室の何体もの少女の大ブロンズ像は圧巻で、事前認識を覆させられる。摩耗し傷があったりセメントが飛び散った工事現場のような床が作品を足元から相乗効果をあげている。係の者に訪ねると「元々は絨毯の床でしたが、この展覧会の為にすべて剥がされました・・」と。
展示壁面を展覧会の度に作りかえるというのは、日本でもあたりまえになったけど、絨毯を剥がしたとは、太っ腹である。
作者と企画側との妥協なき展示方法も見せている。
常設展がこれまたすごいコレクションである。
まず、日本画壇の創始者岡田三郎助の人物がが二点。小品ながら研ぎ澄まされた写実である。岸田劉生、F・ベーコン、ピカソなど古今東西の名品を展示することで、今日の奈良美智の流れ、位置づけを暗に見えるようにもしてある。
写真撮影OK。それぞれが好きな奈良美智さんの少女の前では多くが記念撮影をするが、支障はない。混雑する中でも自然なマナーも向上している。
夏休み、あるいは芸術の秋と「いかにお客を呼び込むか」美術館としては頭悩ます最大の課題となるのであろう。
客寄せパンダ、看板倒れ、コピーに偽り内容不十分というのも少なくない。まだまだ過渡期である。今やっと「物から心へ」が現実として始まっているようだ。